介護派遣は高時給の求人が非常に多く、月給や年収で比較しても正社員と手取りの給与はほとんど変わりません。
また、介護派遣は契約期間から柔軟な働き方が可能であり、さまざまな職場で経験を積めることもメリットです。
一方、管理職やケアマネージャなどの職種を見つけにくいことがデメリットで、介護派遣の求人の多くはヘルパー介護職となっています。
派遣先の施設形態は正社員と同じく、養護老人ホームやグループホームなど介護職の主な受け皿となる職場全般が見つかります。
介護派遣の仕組みについて
介護派遣の仕組みは、他職業の派遣と同じで「自分」・「派遣会社(登録会社)」・「派遣先企業(派遣先)」の三角関係です。
派遣会社に在籍しながら派遣先で従事することになり、職場は派遣先で給与は派遣会社という関係になります。
介護派遣の種類
一般派遣 | 派遣会社に登録。派遣先が決まった時点で派遣社員として雇用関係が成立する。 |
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紹介予定派遣 | 派遣会社に登録。派遣先で最大6ヶ月働き、契約終了後に派遣先と正社員や契約社員などで直接契約できる。 |
特定派遣 | 派遣会社の社員として雇用。派遣先がない状態でも派遣会社の社員であることから給与をもらえる。 2018年の法改正で廃止された。 |
介護派遣の種類は、他職業の派遣と同様に「一般派遣(登録型)」・「紹介予定派遣」の2つです。
一般派遣がいわゆる「派遣」と呼ばれる種類で、求人ごとに決められている契約期間の範囲において派遣先で勤務します。
紹介予定派遣は派遣契約満了後に派遣先と直接契約を結ぶことを前提とした派遣の種類です。
雇用形態は正社員や契約社員などさまざまであり、派遣先の企業に魅力を感じない場合は直接契約を断ることもできます。
特定派遣(常用型)は派遣会社の社員として働く種類でしたが、2015年の労働者派遣法の改正で廃止されました。
介護派遣の職種と時給
ヘルパー介護職 | 一般派遣の求人3,140件、紹介予定派遣の求人707件。施設形態を問わずに時給1,200円から1,700円が相場。 |
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生活相談員 | 一般派遣の求人1件、紹介予定派遣の求人0件。有料老人ホームで時給1,500円。 |
ケアマネージャー | 一般派遣の求人0件、紹介予定派遣の求人1件。グループホームで時給1,500円。 |
サービス提供責任者 | 一般派遣の求人0件、紹介予定派遣の求人0件。 |
管理職 | 一般派遣の求人0件、紹介予定派遣の求人8件。施設形態を問わずに時給1,200円から1,500円が相場。 |
(2019年12月13日時点の「きらケア介護派遣」の求人をもとに紹介しています。)
介護派遣の時給は職種や施設形態を問わずに1,200円から1,700円が相場です。
一般派遣はヘルパー介護職以外の職種がほとんどなく、紹介予定派遣はちらほらと管理職が見つかりますが、それでも求人総数の9割以上がヘルパー介護職です。
一般派遣と紹介予定派遣は時給に差がないため、派遣の種類に関しては派遣終了後に直接契約したいかどうかで判断すればOKです。
介護派遣の月給と年収
時給1,000円の場合 | 1日8時間で日給8,000円、週5日勤務で週給40,000円。4週計算で月給160,000円、年収は1,920,000円。 |
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時給1,200円の場合 | 1日8時間で日給9,600円、週5日勤務で週給48,000円。4週計算で月給192,000円、年収は2,304,000円。 |
時給1,350円の場合 | 1日8時間で日給10,800円、週5日勤務で週給54,000円。4週計算で月給216,000円、年収は2,592,000円。 |
時給1,500円の場合 | 1日8時間で日給12,000円、週5日勤務で週給60,000円。4週計算で月給240,000円、年収は2,880,000円。 |
時給1,700円の場合 | 1日8時間で日給13,600円、週5日勤務で週給68,000円。4週計算で月給272,000円、年収は3,264,000円 |
介護派遣の給与を月給と年収で見ると、正社員の給与とほとんど変わりません。
時給1,200円から1,500円ほどの介護派遣求人が多いため、月給なら192,000円から240,000円、年収なら2,304,000円から3,264,000円が目安となります。
介護派遣のメリットとデメリット
介護派遣は仕事探しを派遣会社に任せることができ、面接がある求人の場合でも非常に採用率が高いことが一番のメリットです。
逆に介護派遣は契約期間が決まっているため、長期的に安定して仕事をするという働き方が難しいことが最大のデメリットとなります。
メリット
介護派遣が気になるかたにとっては、トータル的にチャレンジしてみるメリットは大きいと思います。
- 仕事探しは派遣会社がやってくれる
- 面接がない求人があり、面接があっても採用率が高い
- 時給は1,200円から1,700円が相場で高時給
- 他の雇用形態に比べてすぐに辞めやすい
- いろんな職場を転々として経験を積める
派遣は正社員よりも給与が低いというイメージを持っているかたは多そうですが、時給だけで計算すると本当に差がありません。
そのため、短期でも長期でも継続性を確保できればしっかり稼げるため、これは良い後押しになるのではないでしょうか。
デメリット
デメリットは、いわゆる「派遣のデメリット」といわれる内容が介護派遣にも該当します。
- 派遣会社によっては職種が少ない
- 長期契約がなければ短期契約で繋ぐ必要がある
- 結果を残しても昇進できない
- ボーナスがない
- 長期に働くほど将来に不安を感じやすい
正直、実際に介護派遣を検討する際にデメリットとして抑えておきたいのは、希望する職種を見つけにくいことがある点くらいです。
その他、正社員と派遣を比較してもあまり意味はなく、正社員を希望するなら正社員として転職活動すべきであることは間違いありません。
一般的には今の自分の状況において理想の働き方ができるから介護派遣を利用している、というかたがほとんどだと思います。
介護派遣と正社員の違い
介護派遣と正社員の違いは雇用形態であり、自分が契約する相手が異なることから会社の目標も違います。
介護派遣は派遣会社と契約するので、派遣会社の評価を高めるために派遣先で仕事を頑張ります。
正社員は企業と直接契約するので、社員として会社の業績を上げるために仕事を頑張ります。
介護派遣は継続性を攻略すれば十分に稼げる
契約期間 | 派遣は契約期間があり、月単位で契約更新するケースが多い。 |
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職種 | ヘルパー介護職以外の職種はかなり少ない。 |
施設形態 | 特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、老人保健施設、デイサービス、グループホーム、訪問介護、小規模多機能型居宅介護、障害者施設、など。 |
給与 | 時給1,700円で月給272,000円、年収は3,264,000円。 |
ボーナス | なし。 |
各種手当 | 残業手当以外は期待できない。また、社会保険も求人次第。 |
昇給や昇進 | 昇給は時給アップがあるが、昇進は派遣社員から役職に就くケースがほぼないため期待できない。 |
介護派遣は時給1,700円の8時間勤務、月20日勤務を12ヶ月継続した場合、年収3,264,000円です。
ボーナスは派遣会社次第ですが、一般派遣と紹介予定派遣でボーナスを派遣会社が出してくれたという実例を聞いたことがないので、期待値はゼロに等しいでしょう。
手当は正社員に比べて乏しく完全に求人次第で、福利厚生や社会保険も同じです。
昇進は介護派遣で管理職等の役職に就くケースでない限りは、昇進先自体がありません。
昇給は時給アップがあるので、介護派遣で同一の派遣先で収入を上げるなら昇給を派遣会社に交渉するのが現実的な方法です。
正社員は解雇や退職するまで安定
契約期間 | 正社員は契約期間がなく、解雇されたり退職するまで仕事を継続可能。 |
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職種 | ヘルパー介護職、生活相談員、サービス提供責任者、管理職、ケアマネージャーなど、介護職といわれる全職種。 |
施設形態 | 特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、老人保健施設、デイサービス、グループホーム、訪問介護、小規模多機能型居宅介護、障害者施設、など。 |
給与 | 大きく見積もって月給180,000円から300,000円、年収は2,160,000円から3,600,000円。 |
ボーナス | 企業によるが、ボーナスがあることが正社員の1つのメリット。 |
各種手当 | 企業によるが、派遣に比べて各種手当は充実している。 |
昇給や昇進 | 派遣に比べて昇給や昇進の可能性は確実に高い。 |
正社員の介護士の給与は職種や役職で大きく変わりますが、求人をリサーチした結果としてざっくり見積もると年収2,160,000円から3,600,000円が目安です。
介護派遣とは違って介護士の全職種の求人を見つけることができ、昇給や昇進も加味して安定した将来を考えやすいです。
ボーナスや手当などは企業次第で業績によっても左右されますし、転職活動で高待遇の求人を見つけられるかどうかも焦点です。
介護派遣の体験談
実際に介護派遣で働いたことがあるかたの体験談は、これから介護派遣を検討しているかたにとって参考になると思います。
以下、介護派遣の実体験をまとめているので、迷っているかたは参考にしてみてくださいね。
そこまで真剣に悩む必要はとくにない
介護派遣は多くのスタッフが在籍しているため、代わりのスタッフを派遣できることからいつでも仕事を辞められます。
契約満了まで仕事を継続しなくても辞めることは可能であり、契約の途中で辞めたからといって次の仕事を紹介してもらえないということもありません。
正社員やアルバイトなど企業と直接契約している場合はすぐに辞めることは難しく、一般的には退職希望を出してから1ヶ月から3ヶ月ほどは働かなければならないケースが多いです。
介護派遣の向き不向き
介護派遣の向き不向きは、介護士としてどのような働き方を希望するのかで決まります。
その他、正社員雇用が難しいかた、とくに60代や70代の高齢のかたは介護派遣で仕事を探すほうがスムーズなケースが多いでしょう。
向いている人
介護派遣は今の時点で正社員を目指していないかたに向いています。
- 仕事を掛け持ちしたい
- いろんな職場で働きたい
- 経験を積みたい
- 働きながら資格を取りたい
- 正社員雇用が見つからない
資格や経験を問わず、介護職の正社員求人は多いです。
実際に転職活動しても正社員になることができないケースもあると思いますが、年齢が若いかたの場合は妥協して介護派遣を検討するなら「資格を取る」や「経験を積む」など、他に何かしらの目標を見出したいところです。
年配のかたの場合、他職業と同じように正社員雇用が難しいため、仕事を見つける1つの方法として介護派遣を抑えておいて損はありません。
向いていない人
介護派遣は正社員を希望しているかたには向いていません。
- 正社員になりたい
- とにかく収入を安定させたい
- 1つの職場で長期に働きたい
紹介予定派遣なら契約満了後に正社員として採用される可能性がありますが、この場合は派遣先から提示される雇用形態が本当に正社員なのかどうかを確認しておきましょう。
もし、契約社員やアルバイトなど正社員以外の雇用形態での採用なのであれば、紹介予定派遣で働くよりも普通に正社員として転職活動するほうが早いです。
派遣会社の選び方
派遣会社の選び方は、お住まいのエリアの求人数から選ぶだけでOKです。
- 求人数
- 職種や施設形態など求人の内容
- 週払いの対応
- 友達紹介キャンペーン、など
上記のように派遣会社によってさまざまな違いがありますが、仕事の見つけやすさに直結するのは求人数です。
求人内容に関しては公開求人は事前に把握できますが、非公開求人も加味すると登録しなければどのような条件の求人がどの程度あるのかわかりません。
週払い対応やお友達キャンペーンなどはあくまでもサブ的なメリットであり、介護派遣で本気で稼ぐなら求人数が何よりも重要です。
派遣会社は数社に登録する必要はない
登録する派遣会社を選ぶとき、数社へ登録すべきかどうかに悩むと思います。
- 派遣先によっては複数の派遣会社を採用しているケースがある
- 派遣会社は貢献度の高いスタッフに優先して仕事を紹介する
- 介護派遣で働く限りは派遣会社との付き合いで仕事が増減することは否めない
- 多数の仕事を紹介しても一切応じないスタッフは見切られやすい
上記のような理由から、結局は1社のもとで働くことになるので、思っている以上に数社へ登録するメリットはありません。
数日や数週間といった契約期間の仕事を中心に回転率を上げたい場合は便利ですが、介護士でその働き方をするケースは少ないと思います。
気になる1社を利用してみて仕事量が微量なのであれば、他の派遣会社へ乗り換えるという活用方法がおすすめです。
おすすめな介護派遣会社
介護派遣で実績や知名度の高い会社を3つ紹介するので、これから介護派遣の登録先を探すというかたは検討してみてください。
どれも介護士求人が豊富という介護職に強みのあるサイトなので、他の介護派遣に比べて仕事を見つけやすいことが大きな魅力です。
かいご畑
かいご畑は、2019年12月13日時点で派遣の求人が8,427件あります。
- 対応エリア:全国
- 派遣の種類:一般派遣と紹介予定派遣
Webの検索画面では、「派遣・パート」と派遣とパートが同じ条件になっているため、パートでもよいというかたは同時検索可能で便利です。
きらケア派遣
きらケア派遣は、2019年12月13日時点で派遣の求人が22,101件あります。
- 対応エリア:全国
- 派遣の種類:一般派遣と紹介予定派遣
介護派遣以外にも正社員やパートなど他の雇用形態でも介護職求人を探せるため、働き方を考えながら求人を探したいかたにおすすめです。
カイゴナビ派遣
カイゴナビ派遣は、2019年12月13日時点で派遣の求人が93,891件あります。
- 対応エリア:全国
- 派遣の種類:一般派遣と紹介予定派遣
カイゴナビは介護派遣専門のサイトなので、介護派遣で働くことを決めているかたにおすすめです。
紹介予定派遣だけでも6,972件と大量の案件が用意されています。
介護派遣の利用の流れ
介護派遣の利用の流れは、派遣会社に登録することからはじまります。
- 派遣会社に登録
- 求人相談
- 求人紹介
- 派遣先の見学と面接
- 契約して就業開始
- 派遣会社から給与振込
派遣会社に登録する際に必要なものはありません。
登録後は、面接や入職時に「履歴書」と「資格のコピー」が必要となるので、あらかじめ用意しておくとスムーズです。
STEP1:派遣会社に登録
介護派遣に登録するときは必要書類は何もありません。
また、登録の際に面接はなく、介護職を検討しているなら誰でも登録可能です。
STEP2:求人相談
介護派遣に登録したら、求人相談が実施されます。
これは電話やメールで相談できますし、対面で相談することも可能です。
時給や勤務場所など希望条件をしっかり整理しておきましょう。
STEP3:求人紹介
求人相談後、希望条件をベースに担当者が介護派遣求人を探してくれます。
求人を提案されたらしっかり条件を確認しておきましょう。
もし、条件が合わないなら、他の求人を希望すれば再び探してくれます。
STEP4:派遣先の見学と面接
気になる介護派遣求人が見つかると、派遣先となる職場を見学できます。
見学する際に面接が行われることがありますし、面接がなくても面談はほぼ必ず行われます。
STEP5:契約して就業開始
派遣先が決まると、その仕事に関して派遣会社と契約を結んで就業開始となります。
一般派遣と紹介予定派遣ともに、介護派遣の契約はこの段階で行われます。
時給や勤務時間などの条件に間違いがないか、契約書を一通りチェックしておきましょう。
STEP6:派遣会社から給与振込
派遣先で働いた給与は、派遣会社が支払います。
金額が間違っていたり給与が未払いのときは、派遣先ではなく派遣会社に相談してください。
給与に関して派遣先は何も対応できません。
まとめ
介護派遣は時給1,200円から1,700円の高時給な相場となっており、手取りの給与は正社員の介護士と大きな格差はありません。
- 時給は1,200円から1,700円
- 一般派遣と紹介予定派遣は時給の差がない
- 職種はヘルパー介護職が多く、管理職等はほとんどない
- 施設形態は正社員求人と変わらない
- ボーナスや手当、福利厚生や社会保険などは、正社員のほうが有利
当然ながら、他職業と同じで安定を求めるなら正社員一択で、ボーナスや福利厚生などを重視するかたも同様です。
介護派遣は正社員求人に比べて職種が少ないことがネックですが、その他は手取りの給与や施設形態などに差がないことから、自由な働き方をしたいかたは十分に派遣を利用する理由やメリットを見つけられるでしょう。